今日和。
巷間では『働き方改革』が話題になっております。
経済界をはじめとして政官界は、データを捏造してまでも『高度プロフェッショナル制度』を導入しようと必至です。
この「改革」推進の原動力は、長年うわさになってきた『日本の労働生産性効率の低さ』についての危機感があるようです。
ですが、これ、本当でしょうか?
某氏が、此の件について興味深いツイートもしていました。
素人ながら旧ブログにつづいて、また『世界銀行』の統計データをもとに分析してみました。わたしなりに興味深い知見に辿り着いたので、此処に公開して、みなさまの御意見を受け付けたいと思います。
https://datacatalog.worldbank.org/dataset/world-development-indicators
いわゆる『労働生産性効率』とは「国民一人当たりの国内総生産(GDP per capita)」のことです。ここで、GDP per capita を扱うにあたって、ふたつの「換算法」があります。
まず、この 2 種について比較してみましょう。
対象は G7 加盟国 + BRICS の計 13 ヵ国です。
グラフ 1: GDP per capita (current Local Currency Unit)
グラフ 2: GDP per capita (current US$)
当然といえば当然ですが、「自国通貨建て」と「ドル建て」で、これだけ見え方が異なります。日本経済はある程度内需でまわるところまで来ていたと聞きます。しかし、経団連を構成するような大企業に有利なようにふたたび輸出貿易依存度を高めていってる、ということなので、今後は(参考資料として「自国通貨建て」は併記するものの)ドル建てを基準にして分析を進めていきます。
さて、前掲のグラフをもうすこし詳しく見ていきましょう。
グラフ 1 から、日本経済では 1991 年頃に端を発する『バブル崩壊』から「労働生産性」が停滞していることが分かります。このグラフ(真紅の折れ線)に見られるような「停滞」から、さまざまなな警鐘が鳴らされ、にもかかわらず『失われた 20 年』があるのだと、多くの人々に認識されてるようです。しかし、先進各国に対してそこまで遜色がある訳でもないのが現状です。
ですが、グラフ 2 も併せて観察してみましょう。
ドル建ての『労働生産性』では、日本(真紅の折れ線)がいったん peak を迎えるのは 1995 年なんです。この時期は『アジア通貨危機』の前段として米国クリントン政権下に於いて「強いドル政策」が採用された直後なんですよね。(※参考 1)
そもそも『労働生産性』の成長率って、どんな感じなのでしょうか?
次に挙げるグラフ 3 から(今回の対象国では)おおむね ± 15 % の範囲内で推移している、と言えます。
グラフ 3:GDP per capita growth (annual %)
でも、これではごちゃごちゃしていて見にくいので、G7 と BRICS を層別に分けて掲載します。
グラフ 4:GDP per capita growth (annual %) 【G7】
グラフ 5:GDP per capita growth (annual %)【BRICS】
グラフ 4 から、先進各国は(統計開始年度の 1960 年以降)徐々に労働生産性の成長率を低減しつつあることが分かります。
あれ!?
オカシイですね。
先進各国がならんで労働生産性の成長率を低下させているのに、日本だけ GDP per capita (current US$) が 1995 年以降、ずっと停滞しているのです(グラフ 2 参照)。これは「アベノミクス」を経ても変わりありません。むしろ、ふたたび悪化しています。
では、『労働生産性効率』の定義である「国民一人当たりの国内総生産(GDP per capita)」に戻って、先ずは GDP 総額がどのような推移をしているかを分析してみます。
グラフ 6: GDP (current US$)
グラフ 7: GDP (current LCU)
グラフ 8: GDP (constant LCU) (自国通貨基準(通期))
このグラフ 3 枚から見て分かることは、自国通貨建てで観察すると「1991 年にはじまるバブル崩壊以降」、GDP にみられるような経済成長が鈍化していることですが、ドル建てでみると、より深刻なのは『1995 年以降』です。
なにか、通貨がらみで起こってそうです。
では、為替レートの推移を見てみましょう。
ただし、日本円とイタリア・リラ(当時)は通貨として order が 2 桁も違います。そこで可視化の便宜上「100 で割って」表示します。
グラフ 9: Official exchange rate (LCU per US$, period average) (補正済み)
おかしいですね?
すくなくとも日本円については、対ドルの為替レートに於いて down trend (= 円高傾向)であること以外、特筆すべき変化は(1991 〜 1995 年のあいだには)発生していません。
では、『労働生産性効率』の定義に戻って、総人口で GDP を割っているのですから、各国総人口の推移を分析してみましょう。
グラフ 10: 総人口
グラフ 11: 総人口(G7)
グラフ 12: 総人口(BRICS)
グラフ 11 を観察すると、近年になってから、日本とドイツの総人口が頭打ちになっていることが分かります(日本の peak は 2011 年で 127,817,277 人)
どうも、人口動態の問題が気になってきます。
何故なら、日本では少子高齢化があまりにも進んでいることが社会問題化していますから。わたしが高校生だった 30 年ぐらい前から、「社会科教科書で」警鐘が鳴らされていたことです。
そこで生産年齢人口についてのグラフを描いてみます。
グラフ 13: 生産年齢人口
このグラフの元となる表を EXCEL でチェックすると、1995 年が日本の生産年齢人口の peak になっていることが分かります(87,260,349 人)。
では、ということで、生産年齢人口の比率(総人口比)推移を(1960 年を基準に)グラフ化してみます。
グラフ 14: 生産年齢人口比率(対:総人口)
露骨なグラフが出てきましたね。
実は、日本では「バブル崩壊のスタート」と軌を一にするように、総人口にたいする生産年齢人口が急減しつづけているのです。
具体的には 70 % ちかくあった生産年齢人口の比率が、たった二十数年で 10 % ちかく下落しています。それだけ労働者は減るし、それだけ医療や介護を必要とする人口は増えているのです。つまり、負担は「行って来い」で倍化している、と考えていいでしょう。
たしかに通貨政策などの影響もあるでしょう。
でも、日本の労働生産性効率の低さの問題は、
だって、思い出してください。
先程、
そして、わたしは偶々、ポスト・バブル崩壊の就職氷河期世代です。
自分自身の人生をふり返ると、低賃金にもかかわらず過酷なまでの過重労働に駆り立てられ、挙げ句の果てに心身を壊したことが幾度か、というまとめ方になります。
このような自分にとって、伴侶を得て子供を作ることなど「夢のまた夢」。
ですが、このようなミクロの現象が積み重なって、人口動態の異常を発生させていることは明らかではないでしょうか? 先程述べたような、定年後世代の労働力の埋め合わせのために、過労死になりそうなほどの働き方をしてきましたが、おかげで将来世代への投資としての家族形成はできなかったのです。勿論、個人的な事情もありますが、それだけの社会的圧力が掛かっていたことは明らかなのですから。
昨秋に、こんな報道がありました。
【マル激トーク・オン・ディマンド】 第862回(2017年10月14日)
『アベノミクスこそがこの選挙の最大の争点だ』
河村小百合氏(日本総研上席主任研究員)
http://www.videonews.com/marugeki-talk/862/
“黒田バズーガと呼ばれる未曾有の金融緩和に続いて、マイナス金利まで導入して経済を刺激しても、2%おろか僅かなインフレすら起こせない事態に業を煮やした日銀は今、年間80兆円にものぼる国債や株式の買い付けを行うことで市場に膨大な資金を投入している。しかし、これが日銀のバランスシートの異常な肥大化を生み、日銀が支え切れる能力を超えているために、破綻のリスクが現実味を帯び始めていると河村氏は警鐘を鳴らす。”
たしかに【バランス・シートの異常な肥大化】もコワいです。
ですが、それ以前に、わざわざ失政によって作り出された不景気だというのに、さらに過労状態の労働者が増えるのが明白な『働き方改革』を成立させれば、《火に油を注ぐ》所業となることは一目瞭然です。
このような場合、大量の移民を受け容れる、という選択肢が考えられます。
ですが “Karoushi” という用語が国際的に通用してしまうような現状、さらに「技能実習生」とされるあつかいが如何に非人道的かどうか、やはり国際的に知られている現状で、(自国よりはマシとおもった)移民の人々が、このような歪んだ人口動態を回復できるほど来てくれるというのでしょうか?
さらにグラフ 14 について、2010 年をターニング・ポイントにして先進各国と、あの中国でさえも人口動態の歪みが顕在化しつつあります(長年「一人っ子政策」で有名でしたからね)。ということは国際的な経済環境もこれから雪崩を打つように悪化する可能性もあるのではないでしょうか。
わたしにはこの日本の【失われた二十数年】は、原因と結果を取り違えて、間違った政策ばかりを実施してきたからだ、と感じられます。
個人的に、どう身を処していくべきか思案に暮れる次第です。
参考 1:
https://ja.wikipedia.org/wiki/アジア通貨危機
“経緯
日本、台湾、フィリピンを除くアジアの殆どの国家は、米ドルと自国通貨の為替レートを固定する「ドルペッグ制」を採用していた。それまではドル安の状態で、比較的通貨の相場は安定していた。また欧米諸国は、固定相場制の中で金利を高めに誘導し、利ざやを求める外国資本の流入を促し資本を蓄積していた。一方でアジアは、輸出需要で経済成長するという成長システムを採用していた。中でもタイ王国は、このパターンの典型的な成長システムであり慢性的な経常赤字であった。
またアジアの国際分業体制は、1992年以降の中国改革開放政策の推進により構造的な変化が生じていた。そのため東南アジアに展開していた日系、欧米系企業の多くが、当時人件費の安かった中国本土への生産シフトを強めていた。
1995年以降、アメリカ合衆国の長期景気回復による経常収支赤字下の経済政策として「強いドル政策」が採用され、アメリカ合衆国ドルが高めに推移するようになった。これに連動する形で、アジア各国の通貨が上昇(増価)し、その結果アジア諸国の輸出は伸び悩む展開となった。これらの国々に資本を投じていた投資家らは、経済成長の持続可能性に疑問を抱くようになった。
そこに目をつけたのが、欧米のヘッジファンドである。ヘッジファンドは、アジアの経済状況と為替レートの評価にズレが生じ、結果として自国通貨が過大評価され始めていると考えた。そこで過大評価された通貨に空売りを仕掛け、安くなったところで買い戻せば利益が出る。1992年にイギリスで起こしたポンド危機と同じ構図である。
殆どの国家でドルペッグ制が採られていたため、ヘッジファンドは売り崩せれば巨額の利益を得られる一方で、例え失敗したとしても、アジア諸国の為替レートが上昇していくため、損を被るという可能性は低く、この非対称性が、大規模な通貨への売り仕掛けを呼ぶこととなった。
かくしてヘッジファンドが通貨の空売りを仕掛け、買い支える事が出来ないアジア各国の為替レートは、変動相場制を導入せざるを得ない状況に追い込まれ、通貨価格が急激に下落した。”
巷間では『働き方改革』が話題になっております。
経済界をはじめとして政官界は、データを捏造してまでも『高度プロフェッショナル制度』を導入しようと必至です。
この「改革」推進の原動力は、長年うわさになってきた『日本の労働生産性効率の低さ』についての危機感があるようです。
ですが、これ、本当でしょうか?
某氏が、此の件について興味深いツイートもしていました。
素人ながら旧ブログにつづいて、また『世界銀行』の統計データをもとに分析してみました。わたしなりに興味深い知見に辿り着いたので、此処に公開して、みなさまの御意見を受け付けたいと思います。
https://datacatalog.worldbank.org/dataset/world-development-indicators
いわゆる『労働生産性効率』とは「国民一人当たりの国内総生産(GDP per capita)」のことです。ここで、GDP per capita を扱うにあたって、ふたつの「換算法」があります。
- 自国通貨建て(該当年度基準)
- ドル建て(該当年度基準)
まず、この 2 種について比較してみましょう。
対象は G7 加盟国 + BRICS の計 13 ヵ国です。
グラフ 1: GDP per capita (current Local Currency Unit)
グラフ 2: GDP per capita (current US$)
当然といえば当然ですが、「自国通貨建て」と「ドル建て」で、これだけ見え方が異なります。日本経済はある程度内需でまわるところまで来ていたと聞きます。しかし、経団連を構成するような大企業に有利なようにふたたび輸出貿易依存度を高めていってる、ということなので、今後は(参考資料として「自国通貨建て」は併記するものの)ドル建てを基準にして分析を進めていきます。
さて、前掲のグラフをもうすこし詳しく見ていきましょう。
グラフ 1 から、日本経済では 1991 年頃に端を発する『バブル崩壊』から「労働生産性」が停滞していることが分かります。このグラフ(真紅の折れ線)に見られるような「停滞」から、さまざまなな警鐘が鳴らされ、にもかかわらず『失われた 20 年』があるのだと、多くの人々に認識されてるようです。しかし、先進各国に対してそこまで遜色がある訳でもないのが現状です。
ですが、グラフ 2 も併せて観察してみましょう。
ドル建ての『労働生産性』では、日本(真紅の折れ線)がいったん peak を迎えるのは 1995 年なんです。この時期は『アジア通貨危機』の前段として米国クリントン政権下に於いて「強いドル政策」が採用された直後なんですよね。(※参考 1)
そもそも『労働生産性』の成長率って、どんな感じなのでしょうか?
次に挙げるグラフ 3 から(今回の対象国では)おおむね ± 15 % の範囲内で推移している、と言えます。
グラフ 3:GDP per capita growth (annual %)
でも、これではごちゃごちゃしていて見にくいので、G7 と BRICS を層別に分けて掲載します。
グラフ 4:GDP per capita growth (annual %) 【G7】
グラフ 5:GDP per capita growth (annual %)【BRICS】
グラフ 4 から、先進各国は(統計開始年度の 1960 年以降)徐々に労働生産性の成長率を低減しつつあることが分かります。
あれ!?
オカシイですね。
先進各国がならんで労働生産性の成長率を低下させているのに、日本だけ GDP per capita (current US$) が 1995 年以降、ずっと停滞しているのです(グラフ 2 参照)。これは「アベノミクス」を経ても変わりありません。むしろ、ふたたび悪化しています。
では、『労働生産性効率』の定義である「国民一人当たりの国内総生産(GDP per capita)」に戻って、先ずは GDP 総額がどのような推移をしているかを分析してみます。
グラフ 6: GDP (current US$)
グラフ 7: GDP (current LCU)
グラフ 8: GDP (constant LCU) (自国通貨基準(通期))
このグラフ 3 枚から見て分かることは、自国通貨建てで観察すると「1991 年にはじまるバブル崩壊以降」、GDP にみられるような経済成長が鈍化していることですが、ドル建てでみると、より深刻なのは『1995 年以降』です。
なにか、通貨がらみで起こってそうです。
では、為替レートの推移を見てみましょう。
ただし、日本円とイタリア・リラ(当時)は通貨として order が 2 桁も違います。そこで可視化の便宜上「100 で割って」表示します。
グラフ 9: Official exchange rate (LCU per US$, period average) (補正済み)
おかしいですね?
すくなくとも日本円については、対ドルの為替レートに於いて down trend (= 円高傾向)であること以外、特筆すべき変化は(1991 〜 1995 年のあいだには)発生していません。
では、『労働生産性効率』の定義に戻って、総人口で GDP を割っているのですから、各国総人口の推移を分析してみましょう。
グラフ 10: 総人口
グラフ 11: 総人口(G7)
グラフ 12: 総人口(BRICS)
グラフ 11 を観察すると、近年になってから、日本とドイツの総人口が頭打ちになっていることが分かります(日本の peak は 2011 年で 127,817,277 人)
どうも、人口動態の問題が気になってきます。
何故なら、日本では少子高齢化があまりにも進んでいることが社会問題化していますから。わたしが高校生だった 30 年ぐらい前から、「社会科教科書で」警鐘が鳴らされていたことです。
そこで生産年齢人口についてのグラフを描いてみます。
グラフ 13: 生産年齢人口
このグラフの元となる表を EXCEL でチェックすると、1995 年が日本の生産年齢人口の peak になっていることが分かります(87,260,349 人)。
では、ということで、生産年齢人口の比率(総人口比)推移を(1960 年を基準に)グラフ化してみます。
グラフ 14: 生産年齢人口比率(対:総人口)
露骨なグラフが出てきましたね。
実は、日本では「バブル崩壊のスタート」と軌を一にするように、総人口にたいする生産年齢人口が急減しつづけているのです。
具体的には 70 % ちかくあった生産年齢人口の比率が、たった二十数年で 10 % ちかく下落しています。それだけ労働者は減るし、それだけ医療や介護を必要とする人口は増えているのです。つまり、負担は「行って来い」で倍化している、と考えていいでしょう。
たしかに通貨政策などの影響もあるでしょう。
でも、日本の労働生産性効率の低さの問題は、
【政府による人口政策の失敗】
によって成り立っているのではないでしょうか。だって、思い出してください。
先程、
- 日本の生産年齢人口 peak = 87,260,349 人:1995 年
- 日本の総人口 peak = 127,817,277 人:2011 年
そして、わたしは偶々、ポスト・バブル崩壊の就職氷河期世代です。
自分自身の人生をふり返ると、低賃金にもかかわらず過酷なまでの過重労働に駆り立てられ、挙げ句の果てに心身を壊したことが幾度か、というまとめ方になります。
このような自分にとって、伴侶を得て子供を作ることなど「夢のまた夢」。
ですが、このようなミクロの現象が積み重なって、人口動態の異常を発生させていることは明らかではないでしょうか? 先程述べたような、定年後世代の労働力の埋め合わせのために、過労死になりそうなほどの働き方をしてきましたが、おかげで将来世代への投資としての家族形成はできなかったのです。勿論、個人的な事情もありますが、それだけの社会的圧力が掛かっていたことは明らかなのですから。
昨秋に、こんな報道がありました。
【マル激トーク・オン・ディマンド】 第862回(2017年10月14日)
『アベノミクスこそがこの選挙の最大の争点だ』
河村小百合氏(日本総研上席主任研究員)
http://www.videonews.com/marugeki-talk/862/
“黒田バズーガと呼ばれる未曾有の金融緩和に続いて、マイナス金利まで導入して経済を刺激しても、2%おろか僅かなインフレすら起こせない事態に業を煮やした日銀は今、年間80兆円にものぼる国債や株式の買い付けを行うことで市場に膨大な資金を投入している。しかし、これが日銀のバランスシートの異常な肥大化を生み、日銀が支え切れる能力を超えているために、破綻のリスクが現実味を帯び始めていると河村氏は警鐘を鳴らす。”
たしかに【バランス・シートの異常な肥大化】もコワいです。
ですが、それ以前に、わざわざ失政によって作り出された不景気だというのに、さらに過労状態の労働者が増えるのが明白な『働き方改革』を成立させれば、《火に油を注ぐ》所業となることは一目瞭然です。
このような場合、大量の移民を受け容れる、という選択肢が考えられます。
ですが “Karoushi” という用語が国際的に通用してしまうような現状、さらに「技能実習生」とされるあつかいが如何に非人道的かどうか、やはり国際的に知られている現状で、(自国よりはマシとおもった)移民の人々が、このような歪んだ人口動態を回復できるほど来てくれるというのでしょうか?
さらにグラフ 14 について、2010 年をターニング・ポイントにして先進各国と、あの中国でさえも人口動態の歪みが顕在化しつつあります(長年「一人っ子政策」で有名でしたからね)。ということは国際的な経済環境もこれから雪崩を打つように悪化する可能性もあるのではないでしょうか。
わたしにはこの日本の【失われた二十数年】は、原因と結果を取り違えて、間違った政策ばかりを実施してきたからだ、と感じられます。
個人的に、どう身を処していくべきか思案に暮れる次第です。
参考 1:
https://ja.wikipedia.org/wiki/アジア通貨危機
“経緯
日本、台湾、フィリピンを除くアジアの殆どの国家は、米ドルと自国通貨の為替レートを固定する「ドルペッグ制」を採用していた。それまではドル安の状態で、比較的通貨の相場は安定していた。また欧米諸国は、固定相場制の中で金利を高めに誘導し、利ざやを求める外国資本の流入を促し資本を蓄積していた。一方でアジアは、輸出需要で経済成長するという成長システムを採用していた。中でもタイ王国は、このパターンの典型的な成長システムであり慢性的な経常赤字であった。
またアジアの国際分業体制は、1992年以降の中国改革開放政策の推進により構造的な変化が生じていた。そのため東南アジアに展開していた日系、欧米系企業の多くが、当時人件費の安かった中国本土への生産シフトを強めていた。
1995年以降、アメリカ合衆国の長期景気回復による経常収支赤字下の経済政策として「強いドル政策」が採用され、アメリカ合衆国ドルが高めに推移するようになった。これに連動する形で、アジア各国の通貨が上昇(増価)し、その結果アジア諸国の輸出は伸び悩む展開となった。これらの国々に資本を投じていた投資家らは、経済成長の持続可能性に疑問を抱くようになった。
そこに目をつけたのが、欧米のヘッジファンドである。ヘッジファンドは、アジアの経済状況と為替レートの評価にズレが生じ、結果として自国通貨が過大評価され始めていると考えた。そこで過大評価された通貨に空売りを仕掛け、安くなったところで買い戻せば利益が出る。1992年にイギリスで起こしたポンド危機と同じ構図である。
殆どの国家でドルペッグ制が採られていたため、ヘッジファンドは売り崩せれば巨額の利益を得られる一方で、例え失敗したとしても、アジア諸国の為替レートが上昇していくため、損を被るという可能性は低く、この非対称性が、大規模な通貨への売り仕掛けを呼ぶこととなった。
かくしてヘッジファンドが通貨の空売りを仕掛け、買い支える事が出来ないアジア各国の為替レートは、変動相場制を導入せざるを得ない状況に追い込まれ、通貨価格が急激に下落した。”
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